2020年本屋大賞「流浪の月」読了。
この小説は決して世間には理解されない、ふたりの痛みについての話でした。
世間から見た事実と、本人たちが経験した真実は違うものである。
自分が経験しているものが同じような感覚で他人に理解されることは難しいのだろう。
というかそこにあるのは客観的な事実だけであり、真実は本人しか経験していないもので他人からは憶測や想像の範囲を超えることはないのだろうと思った。
誰も他人を本当に理解することは不可能だし、反対に自分自身を他人に完全に理解してもらうことも叶わない願いなのだろう。
「本物」というものはそう簡単には存在せず、多くが「まがいもの」を本物として捉え、信じ、思い込んでいるのではないだろうか。
「本物」って何だろう
「真実」って何だろう
その答えはそこに居合わせた当人たちしか感じることができず、他人の目に映るのは客観的な事実のみ。
少し哀しい物語。
だけど、「真実」を知る人はいて、その世界の中で描かれる話はすごく温かいものだと感じました。
客観的事実で判断される事象でも、そこには揺るがない真実がある。
誰にもわかってもらえなくても、それをわかちあえる相手がいることの安心感。
「何でわかってもらえないんだ」という感情もあったが、結果これで良かったのかもしれないと思いました。
誰にも分かってもらえない自分自身は存在する
だけどそれと同時に他人も、誰かに分かってもらえない自分というものが存在しているのだろうと考えた。
それを分かろうと努力することは尊いことなのかもしれないが、本当のところまで理解することは簡単なことではないだろう。
寄り添うことはできても、あくまで客観的な事実からの判断であり、本人が抱える真実に辿り着くことは容易ではない。
でもそれを理解した上で人と付き合っていくことは大事なことなのかもしれないと感じた。
まとめ
とりとめのない感想だったが、この小説を読んで一番感じたことは
他人を客観的事実だけで判断することは愚かなことだ
ということ。
無意識にやってしまいがちなことだから、少し自分自身の言動に気をつけていかないと知らず知らずに誰かを傷つけてしまうなと感じた。
温かく幸せな世界で生きていきたい。
そして、せめて自分の周りの人は優しい世界に生きてほしいと思う。